佐々版『三国志』桃園の義盟の三傑?
「安倍氏=劉備、石原氏=関羽、橋下氏=張飛となり、憲法改正・集団的自衛権容認など実現してほしい」佐々淳行
民主党政権の大失政に、国民の怒りの鉄槌ともいうべき審判が下った。無能、未熟、無責任な民主党に政権担当能力がなかったのだ。政権交代時308議席を誇ったのが僅か57議席への転落、鳩山・菅・野田の3首相は引退、選挙区落選、代表辞任という哀れな末路、現職閣僚8人、仙谷氏ら前元閣僚多数の落選など、前代未聞の惨敗である。 筆者はこの3年間に、「彼らが日本を滅ぼす」など5冊の倒閣運動としての本を刊行したが、その中で「政界を去れ」と名指しし名誉毀損訴訟覚悟で批判した、「彼ら」の9割近くが落選した。
危機管理のジンクスに、「弱い内閣の時に限って天災地変や国家的危機が起こる」というのがあるが、3年余の民主党政権はまさにそれを証明した。東日本大震災、福島第1原発事故、北方領土、竹島、尖閣諸島などの領土危機が起き、選挙運動期間中にも、中国公船による確信犯的な尖閣領海侵犯の常態化、中国機による初の領空侵犯に前後して、射程1万キロと米本土にも届く北朝鮮ミサイルが発射され、日本の上空をかすめ飛んだ。
マスコミは、今回の衆院選は消費税増税、脱原発、TPPの3つが争点だと論じ続けたが、その分析は間違っていたと筆者は思う。周辺情勢の緊迫を前に、「これで日本は大丈夫か」と不安を覚えた有権者が国防、海防力の増強や憲法改正を真正面から唱え、「凛として強く美しい日本を取り戻せ」と叫んだ安倍晋三氏ら強い3人を選び、第三極たらんとした嘉田、小沢両氏らが急造した政党に「ノー」と言ったのだ。
もともと、3年前の民主党大勝は、長期化して腐った自民党政治に倦んだ有権者が、政権交代を呼号する民主党に「一度やらせてみるか」という気分に大きく傾いたからであり、自民党の「オウンゴール」だった。ところが、誕生した鳩山政権は、かつての左翼活動分子、日教組、旧社会党の残党、反国家的市民運動家の権力簒奪による左翼政権だったのである。凋落した民主党の再建への道は一つ。政権交代可能な二大政党の一翼として、国家社会の安全保障政策、外交政策を確立し、左翼と決別し、国益と国民の安全を憂う健全な中道政党になることだ。自民党は圧勝した。だが、奢るなかれ。国民はまだ、自民党を許してはいない。この勝因もまた、民主党の「オウンゴール」の反射的利益であることを銘記してもらいたい。景気対策として公共事業拡大、金融緩和などが行われようが、田中角栄時代のように金権政治に戻らないでほしい。
この平成維新とも呼ぶべき大政権交代を巻き起こした老・壮・青の三傑がいる。石原慎太郎(80)、安倍晋三(58)、橋下徹(43)の3氏である。衰微しゆく日本を救おうと、それぞれの意味で命がけの保守合同の義挙を興したこの三傑は、乱暴なアナロジーであるが、筆者に『三国志』の「桃園の義盟」を想起させる。
黄巾賊の乱で衰退した漢王朝を支えようとした劉備玄徳と豪傑関羽、張飛の3人が、劉備の隠遁の桃園で義兄弟の誓いを交わす。劉備玄徳は、漢の中山靖王劉勝の末裔で景帝劉啓の玄孫である。平成の桃園の義盟では、さしずめ岸信介の孫で安倍晋太郎の息子の晋三氏が劉備玄徳であり、橋下義経を助ける弁慶を自任している石原氏が関羽、恐れを知らぬ橋下氏が張飛であろう。
3人には、小異を捨て大同につき、救国の「桃園の義盟」を早急に催し、憲法改正、集団的自衛権行使の容認、国防予算と海防予算、領域警備法、武器使用法、国家安全基本法など国家危機管理にかかわる改革を、デフレ脱却、金融緩和などと同じ優先順位で進め、安倍氏の悲願、「戦後レジームからの脱却」を成し遂げてもらいたい。そして事に当たり、「安倍玄徳」に必要なのは、諸葛孔明のごとき、直言諫争の軍師たちであることも忘れないでほしい。
(さっさ あつゆき)(以上、抜粋)
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